すっかり年末で慌ただしい空気に包まれていますね。
今回は、廃棄物処理法におけるアスベスト廃棄物についてお伝えします。
令和5年10月に大気汚染防止法が改正され、建築物等の解体時にアスベストの事前調査が必須となりました。
アスベスト廃棄物は、廃棄物処理法ではどのような分類がされており、どう処理するのか確認していきましょう。
目次
アスベスト(石綿)とは
アスベスト(石綿)とは、天然にできた鉱物繊維で「せきめん」「いしわた」とも呼ばれています。
石綿は、極めて細い繊維で、熱(耐熱性)、摩擦(耐摩耗性)、酸やアルカリにも強く(耐薬品性)、丈夫で変化しにくいという特性を持ってます。
また絶縁性や防音性にも優れおり、なおかつ安価で経済性にも優れています。
そのような特性から以下製品に多く使用されてきました。
- 建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)
- 摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)
- シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)
しかし、石綿は肺がんや中皮腫を発症する発がん性が問題となり、現在では、原則として製造・使用等が禁止されています。
アスベスト(石綿)の種類
アスベストは全部で以下6種類があります。
- クリソタイル(白石綿)
- アクチノライト
- アモサイト(茶石綿)
- アンソフィライト
- クロシドライト(青石綿)
- トレモライト
この中でも国内で多く使用されたのが、クリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)です。
アスベスト(石綿)の危険性
アスベスト(石綿)は、ヒトの髪の毛の直径よりも非常に細く、極めて細い繊維からなっています。
そのため、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸入されてヒトの肺胞に沈着しやすい特徴があります。
吸い込んだ石綿の一部は異物として痰の中に混ざり体外へ排出されます。
しかし、石綿繊維は丈夫で変化しにくい性質のため、肺の組織内に長く滞留することになります。
この体内に滞留した石綿が要因となって、肺の線維化やがんの一種である肺がん、悪性中皮腫などの病気を引き起こすことがあります。
また、発がん性は、アスベストの種類によって異なり、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)の方がクリソタイル(白石綿)よりも発がん性が高いとされています。
クロシドライトはクリソタイルと比較して、肺がんでは10~50倍、中皮腫では500倍ものリスクがあるとされています。
それでは、アスベストはどのような場所に多く使われ、利用されているのでしょうか。
アスベスト(石綿)建材の種類
アスベスト(石綿)の多くは、建築材料に使用されています。
また、「石綿を含有する」とは、石綿を建材の重量の0.1%を超えて含有する場合をいいます。
以前は重量の5%を超えて含有するものが石綿含有物とされていましたが、1995年に1%、2006年9月以降は0.1%を越えて含有するすべての物の製造が禁止されました。
アスベスト(石綿)は、主に以下のような場所に使用されています。
1 吹付け石綿
鉄骨造では、柱や梁の鉄骨を熱から保護するため、石綿含有吹付け材が使用されています。
鉄筋コンクリート造でも、天井・壁等の耐火・耐熱、吸音、結露防止、居室等の意匠として使用されています。
2 石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材
煙突やダクト等の断熱、配管の保温、天井や壁の断熱、結露防止、貫通部の耐火(吹付石綿の代替)として使用されています。
3 石綿含有成形板等
石綿含有成形板(所謂スレート)は建物の内外装に非常に多く使用されています。
古い工場地帯やビル、家屋などで見かけたことがあるのではないでしょうか。
内装材(壁、天井、床、間仕切り):耐火、吸音、結露防止、防水、意匠
外装材(外壁、軒天、屋根、煙突材):耐火、耐候、防水、意匠
4 石綿含有仕上塗材
内外装の仕上に使用されています。
建物の外装でゴツゴツした外観の塗材であれば石綿含有仕上塗材の可能性が高いです。
内壁の仕上:意匠
外壁の仕上:意匠、耐候
アスベスト(石綿)廃棄物の分類
各法令別の分類
アスベスト含有建材は、発じんの度合い(飛散レベル)により「レベル1~3」に分類されています。
この分類は、建設業労働災害防止協会による石綿含有建材別作業レベル区分によるものです。
- レベル1は、もっとも飛散性の高いアスベスト含有吹付け材であり、吹付けアスベストなどが分類されます。
- レベル2にはアスベスト含有保温材、断熱材、耐火被覆材が分類されます。
- レベル3はそれ以外のアスベスト含有建材が分類され、主にスレートや岩綿吸音板などの成形板の仕上げ材料が多くあります。
アスベスト含有建材は各法令により名称が異なり、主な法における区分の名称を下表に示します。
レベル別名称 | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
建材別名称 | 吹付け石綿 | 石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材 | 石綿含有成形板等 |
廃棄物処理法 | 廃石綿 | 廃石綿 | 石綿含有産業廃棄物 |
大気汚染防止法 | 飛散性アスベスト | 飛散性アスベスト | 非飛散性アスベスト |
労働基準法 石綿予防規則 | 建築物等に吹き付けられた石綿等 | 石綿等が使用されている保温材、耐火被覆材等 | 石綿等 |
廃棄物処理法の分類
アスベスト廃棄物は、廃棄物処理法では、
「産業廃棄物(一般廃棄物)」もしくは「特別管理産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)」
に分類されます。
建材別の廃棄物分類を下表に示します。
建材別名称 | 吹付け石綿 | 石綿含有断熱材・保温材・耐火被覆材 | 石綿含有成形板等 |
廃棄物処理法名称 | 廃石綿 (飛散性アスベスト) |
石綿含有産業廃棄物 (非飛散性アスベスト) |
|
廃棄物分類 | 特別管理産業廃棄物 (特別管理一般廃棄物) |
産業廃棄物 (一般廃棄物) |
アスベスト(石綿)廃棄物の保管・処分方法
廃石綿(飛散性アスベスト)の保管方法
廃石綿は、「特別管理産業廃棄物」に該当します。
よって、それに準じた保管基準で保管する必要があります。
主な保管基準は以下のとおりです。
- 保管場所の周囲に囲いが設けられていること
- 見やすい場所に掲示板が設けられていること
- 特別管理廃棄物が飛散、流出、地下浸透及び悪臭が発散しないよう措置を講じること。
- 特別管理廃棄物保管場所において、ねずみ、蚊、はえ、その他の害虫が発生しないようにすること。
- 特別管理廃棄物保管場所に仕切りを設ける等、他のものと混合するおそれのないよう措置を講じること。
基本的には、廃石綿の飛散防止のため保管する際は2重梱包が推奨されています。
また、特別管理産業廃棄物を扱う場合は特別管理産業廃棄物管理責任者を置かなければなりません。
廃石綿(飛散性アスベスト)の処分方法
廃石綿の処分方法法については、条文で以下のようになっています。
令第6条の5第1項第2号ト
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第103号)
廃石綿等の中間処理は、埋立処分を行う場合を除き、溶融施設を用いて溶融する方法 又は 無害化処理の方法 により行うものとする。
要するに、まずは廃石綿の形状を溶融やセメント固化などによって飛散しにくい物質に変える(無害化)するということです。
また、廃石綿を無害化する前は、特別管理産業廃棄物として最終処分する必要がありますが、
無害化後は産業廃棄物として最終処分することができます。
石綿含有産業廃棄物(非飛散性アスベスト)の保管方法
石綿含有産業廃棄物は、「産業廃棄物」に該当します。主な保管基準は以下のとおりです。
- 保管場所の周囲に囲いが設けられていること
- 見やすい場所に掲示板が設けられていること
- 産業廃棄物が飛散、流出、地下浸透及び悪臭が発散しないよう措置を講じること。
- 保管場所において、ねずみ、蚊、はえ、その他の害虫が発生しないようにすること。
- 保管場所に仕切りを設ける等、他のものと混合するおそれのないよう措置を講じること。
基本的には、廃石綿と同様の保管が必要です。
石綿含有産業廃棄物(非飛散性アスベスト)の処分方法
石綿含有産業廃棄物の処分方法法については、条文で以下のようになっています。
令第6条第1項第2号ニ
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第103号)
石綿含有産業廃棄物の中間処理は、溶融施設を用いて溶融する方法又は無害化処理の方法により行うものとする。
こちらも廃石綿同様、まずは溶融などによる無害化をするものとされています。
処分方法まとめ
環境省の「石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)」から処分方法は以下のようにまとめられています。
非常にわかりやすくまとめられているので参考にしていただければと思います。
まとめ
今回は、廃棄物処理法におけるアスベスト(石綿)廃棄物について説明しました。
今後、アスベスト廃棄物は、古い建物の解体・改修に伴い排出量が増えていくとされています。
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