石膏ボードは、建物の内装材として広く利用されており、多くの人に知られている建築素材です。廃棄の際には適切な処理が必要になり不適切な廃棄は、環境汚染や法律違反につながる可能性もあります。この記事では、石膏ボードの適正処理がなぜ重要なのか、そして正しい廃棄方法を選ぶことで得られるメリットについて解説しますので参考にしてください。
石膏ボードとは
石膏ボードは、石膏ろいう硫酸カルシウムと水から組成されている鉱物の一種を石膏ボード用の原紙で包み板状に成形された建築資材のことで、防火性、遮音性、工事の容易性等の特徴をもち、経済性にも優れていることから建築物の壁、天井などに広く用いられています。
石膏ボードを使用するメリット
では石膏ボードを使用するメリットについてお話していきます。
価格
石膏ボードは建築資材の中でも特に価格が安く購入することが出来ます。
一般的に使用されている石膏ボードのサイズは910mm×1820mm×9.5mmのものが多いですが1枚当たりの価格は500円ほどで購入が可能で、同じサイズの合板の価格と比較すると約3分の1~10分の1ほどの価格になっています。安価に購入・利用ができることも広く建築資材として普及した理由の一つと言っても過言ではありません。
防火性・遮音性
石膏ボードの重量の約20%が結晶水という水分でできています。通常の状態では蒸発することはありませんが、高温になるとこの結晶水が分解し、水蒸気となり、温度の上昇を遅らせる働きをしています。さらには石膏そのものが熱や火を伝えないように防ぐ役割を果たしているので、防火材料として認められています。
また、石膏ボードには音を通しにくい性質があるので、複数枚の重ね張り、他の遮音性の高い素材との併用で高い遮音性能を得ることが出来ます。そのため建築物の壁や防音室などで使用されています。
石膏ボードのデメリット
価格が安く機能性にも優れている石膏ボードですが、デメリットも存在します。
強度
石膏ボードは全体にかかる衝撃、いわゆる「面の力」には強いのですが、画びょうや釘などの打ち込みに対しては比較的脆くポロポロと崩れてしまう弱みがあります。そのため、鋭いものがぶつかると穴が開いてしまったり、へこむと元に戻らないため注意が必要です。
耐水性
石膏ボードは、石膏と紙とで造られているため水や湿気には強くありません。なので常に水濡れのある可能性の場所や、高湿度が予想される場所へは設置できません。ただし、防水や耐水性を向上させる処理を施してあるものは、水回りの壁にも使用できます。
有害物質
石膏ボードにはアスベストやヒ素、カドミウムなどの有害物質が含まれていることもあり、雨水などの水分で化学反応を起こし、有毒ガスの硫化水素を発生させる恐れがあります。硫化水素は吸い込むと頭痛やめまい、腹痛を引き起こす可能性があるもので、基準を超えると死に至ることもあります。
このように石膏ボードは埋め立てたときにさまざまな要因が重なることで有害物質を発生させる恐れがありますので、リサイクルのできる処分場で処理しなければなりません。
産業廃棄物として処理が必要になる石膏ボード
不要になった石膏ボードを捨てる場合、一般的なゴミとして扱えず産業廃棄物として扱う必要があります。
石膏ボードの産業廃棄物処理における分類
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(いわゆる廃棄物処理法)では産業廃棄物の20種類に区別されるうちの「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」として分類されます。
以前は、製造工程で生じた石膏ボードは「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」に分類、住宅の解体工事の際に生じた石膏ボードは「がれき類」に分類という形で、石膏ボードの排出された状況によって異なる分類をされていました。しかし近年では、排出状況にかかわらず、廃石膏ボードは「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」として扱われることになっていますので注意しましょう。
石膏ボードの処理方法
産業廃棄物である石膏ボードは一般の家庭から出た場合であっても、燃えるごみや不燃ごみとして自治体に出すことはできません。石膏ボードは中間処理施設で破砕・選別などの処理を通すことで石膏ボードの原材料や、土質改良に用いられる固化剤などにリサイクルすることができます。また、石膏ボードを成形していた紙類に関しては圧縮加工を行い再生紙として再利用されることがほとんどになります。そのため、リサイクルしやすい状態のものの方が比較的、安く処分することが出来ます。
石膏ボードの廃棄方法は産業廃棄物処分業の許可を持つ処理業者へ依頼するか、処分場へ直接自分で持ち込むかのどちらかになります。業者へ依頼して処理する方法を選ぶ場合は、「産業廃棄物処分許可」を持っている専門業者かどうか必ず確認が必要です。
不適正処理が環境に与える負荷
前述したとおり、多くの産業廃棄物として処理された廃石膏ボードは中間処理施設での破砕・選別などの処理を通した後石膏部分と紙部分でそれぞれリサイクル処理が行われますが、再資源化を行うようなリサイクル処理ができるものは適切に分別された石膏ボードのみになります。石膏ボードだと識別できるような原形が残っていない、いわゆるミンチごみと呼ばれる状態のものや、金属くず、土や、壁紙などの異物が付着したものは処理業者に受け入れてもらえないことが多くなってしまいます。また、石膏ボードは水や湿気に弱く、水濡れの程度によってはリサイクルの処理を経て再資源化はできません。リフォームや解体作業後の廃石膏ボードは、高湿度の場所や水濡れの可能性ある場所を避け、乾燥した状態を維持しておくことが望ましいです。
以前までの石膏ボードの処分に関しては「安定型最終処分場」と呼ばれる施設で処分されることが大多数を占めていましたが、次に記述するトピックで起こった事例を機に「管理型最終処分場」で処分されるようになりました。その要因として石膏ボードに含まれる有害物質があげられます。石膏ボードは製造年によっては石綿(アスベスト)やヒ素、カドミウムなどの有害物質が含まれる可能性があります。
アスベスト入りの石膏ボードについては昭和61年(1986年)に製造が禁止されたため、それ以降に製造された建物にはアスベスト入り石膏ボードが使用されていないと思われます。
アスベスト入り石膏ボードの年代別の使用量は以下になります。
・昭和30年代(1955年~1964年):約1%
・昭和40年代(1965年~1974年):約2%
・昭和50年代(1975年~1984年):約5%
・昭和60年代(1985年~1986年):約10%
昭和30年代から昭和40年代にかけては製造量は全体でみると比較的少なく、主に公共施設や工場などの建築物に使用されており、昭和50年代から昭和60年代の製造禁止までにかけては製造量が増加し、一般住宅やオフィスビルなどの建物にも使用されるようになりました。建築された年代に応じて石膏ボードの廃棄に石綿が含有されていない証明が必要になる場合があります。
石膏ボードの不適正処理において発生した事例
○平成11年10月6日に、福岡県筑紫野市の安定型最終処分場において、浸透水の水質検査のためのサンプリング作業の際、送水槽内で硫化水素中毒と疑われる作業員3名の死亡事故が発生し、その後の処分場内部のボーリング調査により、ボーリング孔内から最高で15,000ppmの硫化水素ガスを検出。
○ 硫化水素が発生した原因については、ボーリング調査の結果より、層厚が30mにも及び層内は湿潤状態で嫌気的性状を示していたこと、廃棄物層に有機物が10%程度含まれていたこと等から、有機物の生物分解に伴い、より嫌気的な状態となり、硫酸塩還元菌の活動がより活発になる条件を有しており、廃棄物中の硫黄分が硫化水素に還元されたものと考えられている。
また、悪臭対策として注入している硫酸第一鉄も硫黄分の補給源となり、硫化水素の発生を促進したものと推定されている。○ 硫化水素が発生した原因については、ボーリング調査の結果より、層厚が30mにも及び層内は湿潤状態で嫌気的性状を示していたこと、廃棄物層に有機物が10%程度含まれていたこと等から、有機物の生物分解に伴い、より嫌気的な状態となり、硫酸塩還元菌の活動がより活発になる条件を有しており、廃棄物中の硫黄分が硫化水素に還元されたものと考えられている。
また、悪臭対策として注入している硫酸第一鉄も硫黄分の補給源となり、硫化水素の発生を促進したものと推定されている。https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1209/h0906-2_14.html
以上の事例より平成18年6月から、廃石膏ボードの安定型最終処分場への埋立処分が全面的に禁止となり、現在は管理型最終処分に処分されています。
適正な処分を行うことで得られるメリット
石膏ボードの処分は廃棄物処理法に基づいて厳しく規制されています。不適切な処理を行った場合、個人や企業は罰金や処分の責任を負う可能性があります。正しい処理を行うことで、これらの法的リスクを回避し、企業の信頼性や社会的信用を守ることができます。また、環境に優しいリサイクル活動や適切な廃棄物処理を行うことは、社会的責任を果たす行為として企業や個人の評価を高める要素にもなります。特に企業においては、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、環境保護への姿勢が重要視されており、適切な処分を行うことがCSR(企業の社会的責任)の一環として評価されます。
ジェイ・ポートでの処理について
弊社ジェイ・ポートでは産業廃棄物処理業者として石膏ボードの受け入れを行っております!
さらには産業廃棄物処分業、収集運搬業での優良認定を取得していますので、安心してお任いただけます!!
まとめ
いかがでしょうか。
今回の記事をまとめると。
石膏ボードは防火性・遮音性に優れ、価格が安いため広く利用されていますが、耐水性の弱さや有害物質を含む可能性があり、適切な処理が必要です。不適切な廃棄は環境汚染や法的リスクにつながりますが、正しい処理を行うことでリサイクルが促進され、環境保護に貢献できるほか、企業や個人の信頼性向上にもつながります。ジェイ・ポートでは、大阪府・市の優良認定を取得しており、石膏ボードの適正処理に対応しています。安心してお任せください。
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